
月虹
夜にかかる虹のような、淡く長い余韻。年に一度の雫取り。

夜の静けさに寄り添う、生酛の酒
Fugetsu Sake Brewery
明治二十八年(1895)創業 — 新潟・月影郡浮月町
浮月——それは、凪いだ水面にうかぶ月影のこと。手の中の盃にも、夜ごと、小さな月がのぼります。
私たちの酒は、その月を映す水でありたい。香りで驚かせるのではなく、一日の終わりの静けさに、そっと寄り添う一杯であるように。雪深い山あいの小さな蔵で、八代にわたって、そう願いながら醸してきました。
浮月酒造 八代目蔵元・杜氏 水守 律
浮月の酒づくりは、水と米と、時間でできています。どれひとつ、急がせることはできません。
蔵の裏手にそびえる月影山。その雪解けが二十年の歳月をかけて辿り着く伏流水は、きわめて軟らかい超軟水です。浮月の口あたりのやわらかさは、そのままこの水のやわらかさです。
酒米は、蔵から十里以内の契約農家が育てる五百万石がほとんど。雪国の大きな寒暖差が、淡麗な酒にまっすぐ向く、芯のある米を育てます。田んぼの顔が見える距離で、酒を醸します。
人工の乳酸に頼らず、蔵に棲みつく微生物たちの仕事を待つ——浮月は全量、生酛(きもと)造りです。ひと冬まるごとの時間がかかりますが、その遠回りだけが連れてくる深さがあると信じています。
夜が、いちばん長い町で。
浮月町 — 雪と月の郷